愛するとは,
みずからの愛する対象に好意を持ち,
そのものと辛抱強く付き合い,
その奇妙で嫌な面に対しても優しい気持ちで接してやり,
ついにはそれなくしては生きられないといったようになるまで,
そのものを大切にすることである。
そうすれば,そのものは,言うに言われない美しさにおいて現れ,
その含蓄によって,愛する者に対して報いてくれるであろう。
そのようにして人は,すべてのものを愛することを学ばねばならず,
したがってまた,自分自身とその運命をも愛することを学んでゆかなければならない,
とニーチェは語っている。
放送大学教材 「現代の哲学」 第15章 運命と生存の意義の問題 (渡邊二郎著) より抜粋